閉店12日前のブックオフがヤバかった

先日学芸大学駅の近辺で飲んでいたところ、なんとなく立ち寄った「BOOK OFF 学芸大学駅前店」が偶然にも12日後に閉店するとのことで、閉店セールを行っていました。

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で、閉店直前のブックオフでの買い物自体はこれまでも何度か経験していたのですがこの店舗の閉店セールは前代未聞の割引率でした。

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まずほとんどの書籍が110円〜390円に値下げされ、その上でそれらの本を2冊買うと合計で100円になるという、一冊でも多く持って帰ってほしいという想いがダダ漏れな割引スタイル。コミックなどは10冊買うと300円でした。
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閉店までそれなりに猶予があるためか、それなりにレパートリーも多くあったので、飲み中であまり重いものを持ちたくはなかったものの20冊ほど買ってしまいました。

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買った書籍

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こういう10冊を買いました。

今見ると「なんでこれ買ったんだ?」みたいな部分もあるにはあるのですがなにしろ全部で500円なので微々たる問題です。

ちなみに、結構専門書の割合が高かったのですが

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専門書は値引き前の価格が千円台のものも多く、計算したところ11035円分安く購入できていたようです。犯罪?

買ったコミック

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自分のかなり好きな漫画に「スピリットサークル」という作品があり、漫画本をあまり持たない自分がほぼ唯一全巻新品で購入して持っている漫画なのですが、その作者様の前作にあたる「惑星のさみだれ」が気になっていたものの読めていなかったので、全10巻ということもありこの機に買いました。

感想としては正直全然好みでなかったというか、スピリットサークルが傑作過ぎたあまり自分の中のハードルを越えられなかった(前作にあたるので当然といえば当然ですが)ものの、なにしろ快活クラブに30分滞在するより安い価格で買ったので全く問題ではありませんでした。作者様には色々な意味で申し訳ないですが...

ちなみに、このブックオフには全10巻のうち第2巻のみが置いておらず、10巻買わないと300円にならなかったため、穴埋めとして、

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早乙女姉妹は漫画のためなら!?」を購入しました。エロいので。

メルカリでフェイク(偽物)を避ける、ただ唯一の方法

単刀直入に

結論から書くと「出品物から生活の見えない出品者を避ける」ことです。

「生活の見える」例として筆者のメルカリアカウントでの過去の出品一覧を載せてみると、f:id:cubb:20241103185356p:image

このような感じです。

この出品一覧を見るだけでも、皆さんは

・80〜90代の古着、ストリート系の服を主に着用している(していた)

・アウトドア、デジタル腕時計の蒐集といった趣味がある

という、筆者に関する少なくともふたつの情報を予測できると思います。それは当然ながら出品者である筆者が生活の中で購入して着なくなったり使わなくなったものを出品しているからです。

次に、先ほどiPhoneについてくる純正のイヤホンを探している時に発見したアカウントの写真を見てみましょう。

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実際に取引したわけではないので100%そうだとは言いませんが、このアカウントはかなり怪しいとみてよいでしょう。理由は前述の「生活が見えない」です。どういう生活をしていたらこんなiPhoneについてくるイヤホンや充電器が大量に余る生活をすることになるのでしょうか?自分の読みでは、おそらく海外の通販サイトで大量に偽物のiPhone周辺機器を購入し、純正品として転売しているのでしょう。

もちろんそういった事情が生じることも生きていればあるのかもしれませんし、ショップとして運用しているアカウントもあるので一概には言えませんが、自分はこうしたアカウントから買い物をすることはありません。

たまたま行った居酒屋がTwitterでバズってた犬のいる店だった

https://x.com/yaruki_nash2/status/1843228851872399697

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このツイートを見た翌日ぐらいに友達と学芸大で飲んだのですが、常連さんの会話からこの店がこのツイートのお店だと判明しました。

ツイートの犬はいましたがケツしか見れませんでした。

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お酒も料理も美味しい上に安くてとてもいいお店でした。鶏の肝刺しも食べられた。

炙りや89 というお店です。

降りたことのない駅で過ごしたかった(新綱島)

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自分は現在東急新横浜線と相鉄新横浜線の直通運転で羽沢横浜国大前駅へ行き大学に通っているのだが、さまざまな路線が繋がっている影響から度々直通が止まったり大幅に遅れたりする。

今日もそんな日だった。振替輸送もあるが「羽沢」には面倒な行き方しかないし、再開の見込みも付かず、なによりすごく天気が良い日だった。

研究室には夕方までに一度、カメラを設置するだけの作業をしに行けばよかったので、道中でまだ一度も降りたことのない新綱島駅に降り、過ごしてみようと思った。

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綱島は比較的新しい駅なのでかなり綺麗だった。
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すぐ近くに東急東横線綱島駅があるので、新しめの駅特有の周りに何もない感は薄い。
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とりあえず駅を出て川に行ってみた。
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平日の昼間なのでかなりのどかな感じ。この日はお弁当を持ってきていたので河原で食べた。

この後は綱島駅前で適当にカフェやら快活クラブやらに入ってもよかったが少し歩いたところにアピタがあるとのことで、そこに行くことにした。

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道中トイレに行きたくなったので写真左手のミニストップに寄ったらトイレにカギがかかっていて、それがあまりにも空かないのでさすがにと思いノックしたらそのまま開いた。かんぬき式のドアを引いたままドアを閉めていて、実際にはかんぬきが引っ掛かりドアが閉まっていなかったものの少し離れて見ていたせいで気づけなかったf:id:cubb:20240904134817j:image

道中神社に寄ろうかと思ったものの、階段がわりと高くてやめた
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やがてアピタが近づくと、そのモダン感にびっくりした。アピタはなんというか、ちょっとイモくさいショッピングモールの印象が強かったので。
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アピタというショッピングモールには少し思い入れがある。浜松に住んでいた、亡くなった父方の祖父がなぜかアピタを気に入っていて、父の実家に帰省するといつも車でアピタに行った記憶がある。父方の祖父祖母はなんというか孫へのサービス精神的なものに薄く、祖父祖母が特別どこかに連れて行ってくれたりみたいなものは少なかったけど、アピタは数少ない祖父が連れて行ってくれる場所だった。
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中はふつうの小規模目のショッピングモールで、カルディもあった。

ショッピングモールに入っているカルディにもやはり思い入れがあって、それもやはり浜松の父方の実家絡みだ。祖父が死んで数年後に諸事情でそこに半年ほど住んでいたことがあった。その時いろいろあってすごく絶望的な気持ちで、一応通信制高校に在籍していたもののあまり通う必要もなくほぼニートのような状況だった。時間はある、けど何をやったらいいかわからない毎日の中で、少しでも気持ちを豊かにしようと思ってやっていたことの一つがコーヒー豆やハーブティーに凝ることで、浜松の郊外でそういったものを調達できる数少ない店がショッピングモールに入っているカルディだった。

ちなみに他にはブックオフの100円コーナーであえて全く興味のわかない本を買って読んだり、ホットミルクに凝ったり、平日昼間のすたみな太郎で吐く寸前まで食べたりしていた。
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フードコートで作業しようと思っていたのに、むちゃくちゃ混んでいた。平日昼間なのに...

これでなんか萎えたので駅に戻った
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小規模な駅ビルの3階にワーキングスペースがあるらしく、そこに行こうかと思ったものの1時間1600円とかだったのでやめた。意外と人入りはあった。
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電車が来るまで同ビル1階のよくわからないけど高そうなチョコ屋を見ていたら一個150円のチョコを試食でもらって気まずかった。なんか買おうかと思ったけどブラックサンダーぐらいのサイズでブラックサンダーみたいな見た目のチョコが一個400円とかして平たく言うと引いた。ちゃんと買い物しそうな人が店員さんに質問していたときを見計らい巧みに逃げて電車に乗った。

書いていないけどセカンドストリートに寄ったりもしたので、結局新綱島には2時間くらいいた。

それで研究室へ作業しに行ったら作業用のカメラを忘れていて何もできなかった。帰っておけばよかった。

おわり

京都(8/25)

ひさびさに京都に行った。

京都の街を歩いているとスケール感が東京と違って驚く。碁盤の目のような道で道が分断されないのでどこでも歩いていけるし、どこにもかしこにも面白いものがあるのでなんだか東京とくらべて広くも狭くも感じる。もちろん、それは京都盆地のそれもごく一部だけなんだろうが。

 

京都に行って特に何をしたというわけでもなく、人の家に一泊して共同浴場に行ったり

ラーメンを食べたり

川に行ったりした。

ところで最近、意識してなんでもない写真を撮るようにしている。別にいいカメラを持っていて写真を趣味にしている、というわけでもないのだが、「なんでもない瞬間の写真」こそ意識して残しておかないとあっというまになくなってしまうような気がしている。

 

白昼夢の町

先日、群馬県邑楽郡大泉町へ行ってきた。

大泉は群馬の南端近くに位置する小さな町だが、日本ではじめて外国人の受け入れ政策を行なった町として有名でもある。

2024年現在住民の約20%が外国人であり、そのなかでも半分以上をブラジル人が占める。町にはブラジル系の飲食店やスーパーが多く存在し、その町並みから「ブラジルタウン」とも呼ばれている。

大泉観光協会(旧ブラジリアン・プラザ)

館林ICから大泉町に向かうと、ここが最初に目につくブラジルポイントだったはず。

大泉観光協会(旧ブラジリアンプラザ)

右手に不動産屋?があったが、営業しているのかは謎。予約制とかかも?

かつてはショッピングセンターとして栄えていたようだが、現在は1階が観光協会となりブラジル移民の歴史に関する展示やレンタサイクルの貸し出し、イベントスペースとしての運用が行われている。

 

移民の歴史コーナーは簡素ながらかなり見応えがあり、中には移住者の苦境が赤裸々に綴られた生活史の展示も

フジタイトのサインはなかった

展示コーナーにはスタッフの方が常駐しており、展示されていたサンバ衣装を着させてもらったり、おすすめのレストランを伺えた(一番のおすすめは駅前の老舗『レストランブラジル』だが、ビュッフェ形式でリーズナブルな『カサ・ブランカ』もよいとのこと)

ちなみに入り方がわかりづらいが、2階にも立ち入ることができる。


2階にはタトゥーショップや小規模なスポーツジム、地元コミュニティの集会所がある。

西小泉駅前〜旧354線沿いを歩く

大泉町は基本的に住宅街と工場のみの町で、車社会であることもあり繁華街的なエリアには乏しいようだが、西小泉駅前の道と、それに交差する旧国道354線(現:群馬県道142号線)沿いにブラジル系の店などが並んでいる。

西小泉駅。ブラジルらしい配色

 

逆に旧354線沿い(の、大泉町観光マップに含まれているエリア)には一般的な、いわば日本人向けのスーパーマーケットは見当たらず、少し離れたエリアにベイシアなどの郊外型スーパーが点在している模様。

この辺りはもとより車社会のはずなので、普通のスーパーなどは車での来店前提の場所に出店し、逆に外国人向けの店は日本での運転が可能になるまでにハードルがある多くの外国人が徒歩で来店できる場所に出店した、という流れで棲み分けが発生しているのだと思う。

駅近くにはアジア系の食品店もあり、ブラジル人だけが多いわけではないというのを感じる。

スナックやパブ的な店も多く、平日の昼間だったので人通りはまばらだったものの夜は賑やかになりそう。

ブラジル系スーパーはどこも服屋や電気屋、ブラジル人向けの銀行や自動車教習所、飲食店などを併設していた。ブラジルで一般的なスタイルなのか、出店コストを抑えるため1箇所に纏めているのかは不明

ランチ(カサ・ブランカのビュッフェ)

レストランブラジルかカサブランカで悩んだ結果、カサブランカに行くことにした。ちなみにカサブランカの位置は大泉観光協会のマップでは左端のほうにあたるが、右端にあたる観光協会からゆっくり歩いても20分かからないくらいの距離だったと思う。

ビュッフェは1時間1990円だが、そこまで厳密に時間を測っている様子はない。ツアー観光客?はここで食事をするのが恒例らしく、行った時もガイドの人が食事をしていた。

 

なかなか美味しい。

...ところで、このカサブランカは店頭に「カサブランカグループ」と表記されていて、Googleマップにも「カサブランカ大泉店」とあったが、系列店があったり何らかのグループ展開がされているわけでもなさそうなのが少し謎。

別のスーパー「スーパーメルカド タカラ」は太田店との表記があったが、調べてみると群馬県伊勢崎市内にも伊勢崎店が存在するらしい。

住宅街

カサブランカから駅方面に旧354線沿いを歩いて戻る。

なんとなく、旧354線沿いから一本入った住宅街を彷徨いてみた。

普通の、地方都市郊外の住宅街という感じ。

大泉町について、移民に悪感情を持つ人の投稿で「外国人の出すゴミが散乱している」などといった投稿がよく見られるが、特にそのようなことはなかった(そもそもあったとして、それが移民によるものなのかなど誰にも知る由はないのだが...)

昔住んでいた浜松市の浜北周辺によく似ている(ちなみに、浜松市もブラジル系移民の多い地域ではあるが、住んでいた浜北は工場もなくあまりそういう雰囲気はなかった)。これで道路に出るとブラジル系の店が並んでいるというギャップが面白い。

西小泉駅を越える

タトゥーショップが多い

旧354線沿いに西小泉駅を超えると、小さな食品店と数軒のタトゥーショップを通り過ぎた後は、もう普通のよくある郊外の通り沿いでしかなかった。

写っているウェルシアに寄ってみたが、特に外国人向けの品揃えというわけでもなさそうだった

感想

この町をよく知るためには泊まりで滞在して、夜もうろついたりパブに入ってみるのがいいんだろうが、そこまでするほど広い町ではない...

ブラジルタウンと聞いていて、実際そういう風にも感じたが、想像していたような感じではなかった。もっと町全体からして異国風味なイメージだったが、実際にはごく普通の郊外に、移民者の日常が唐突かつ自然に混ざっている、といった印象。

車で行って帰ったので余計そう感じたのかもしれないが、なんだか不思議な体験だった。地方都市郊外を車で走っていたらブラジルに迷い込み、そうかと思えばブラジルでもなく、と思っていたらあっという間にやはりただの地方都市郊外に戻ってしまう。

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なんだか白昼夢のような町だった。

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マッドマックス:フュリオサのメモ───真社会性動物のウォーボーイズ、側社会性動物のバイカー軍団

マッドマックスフュリオサ観てきた

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本作は「デスロード」でお馴染みのイモータン・ジョーのシタデル、前作で存在のみが明かされた緑の地のほかに、ディメンタス率いる地獄バイカー軍団が登場したが、本作では前作と比較しシタデルと地獄バイカー軍団の生活史を紐解けるような描写が多く興味深かかったので、そのあたりに関して観ていて考えたことをメモしておく。

 

まず本シリーズは核戦争後に秩序が崩壊し世界すべてが砂漠化している世界観なのだが、イモータン・ジョー率いるウォーボーイズ、並びに水などの資源を擁するシタデルでは非常に高度な社会を形成している。

ここでいう「高度」とはインフラや倫理面で高水準という意味ではなく、社会性動物として高度、すなわち真社会性動物であるハチやアリに近いという意味で、彼らはコミュニティの維持そのものを目的とした道具として扱われている。

ハチやアリの場合は、個体それぞれの命を捨てる利他行動すべてがコロニーそのものが女王の仔で、それぞれが極めて近い血縁関係にあることから成り立つ血縁淘汰という考え方で説明できるが、血縁を持たない寄せ集めのウォーボーイズではそれがジョーの超合理主義に基づいた施策により実現している。

ジョーは人間を道具とみなし物事すべてを利益の大小でしか評価していない。例えば、「ウォーボーイ」の全身白塗りに丸坊主という「フォーマット」は、性別・人種・疾病の有無などといった差異を均一化するはたらきがあり、結果として過酷な世界においてウォーボーイという「新しい人種」、ならびに連帯コミュニティを形成することに成功している。これはジョーがレイシズムのような「非合理的な思想」に染まっていない(もしくはそれよりもコミュニティの形成を高利益と判断している)証拠である。

さらに彼らに植え付けられた、「希望のない現世には意味がなく、仲間のために死に"ヴァルハラ"に行くことこそ意味がある」という教義は、戦いにおいては進んで死を選択するが、自殺は選ばない精神性を彼らの中に形成し、血縁関係のない働きアリたる彼らに利他性を発現させている。

ウォーボーイは栄養状態や病気、教育の不十分さからか、個としての能力は一部を除き身体的・知能的にもさほど高くない(本作でも何も考えず地獄バイカー軍団にシタデルの情報をすべてバラしてしまっていた)が、その全員が迷わず自爆を選ぶ兵と考えると非常に強力である

またその姿勢はフュリオサへの対応においても顕著である。

例えば、妻の身分から逃げ出し、組織内で成り上がったフュリオサをそれと見抜き(そうでなくても健康かつ容姿端麗なメスであるフュリオサを)無理やり妻にすることは難しくなかっただろうが、それをしなかったのは産む意思のないメスを妻にしメカニックを1人失うコストと出産確率の低さを利益と天秤にかけた結果だろう。また「デスロード」では物語開始に至るまでもフュリオサが複数回脱走を試みていたことが中盤明かされるが、ジョーがそのコストを背負ってまで有能なフュリオサを重役に起用していたことは、成功確率が低く、頻度としてもおそらく数年に一度程度の「イベント」のリスクを取りフュリオサを粛清するよりは「イベント」を受け入れ有能な兵士を起用し続けることの方が利益率が高いとした結果だろう。結果的にその判断はシタデルにおけるイモータン・ジョー政権の崩壊を招くがマックスというイレギュラーがいなければフュリオサは連れ戻されていたはずで、間違った判断とは言えない。こういったフュリオサへの対応からは、ジョーが個人的な性欲や憎しみではなくコミュニティの維持と発展を目的とし、忠実な兵士ウォーボーイズ、子を産む妻、「乳牛」の女たちのみでなく、絶対的カリスマとしての自分さえもひとつの道具として扱っていることがわかる。

(一点補足すると、「デスロード」にてフュリオサに連れ去られた妻を追う過程でジョーが側近の一人に「利益に対して大きな損失を出している」とキレられるシーンがあるが、あれもジョーが利益度外視で妻(とその子)を追っていたわけではなく、単に死後もコミュニティを維持するために一人でも多くの息子を得ることを最優先事項と考えていたジョーとそこまで広い視点で物事を見ていない側近の価値観の相違が現れただけだと自分は考える)

 

対してディメンタス率いるバイカー地獄軍団は、「軍団」とはあるものの実態としてはそこまで身分の差があるようには感じられず、側社会性動物的といえる。側社会性とは動物が社会性を獲得する過程の仮説に使われる概念で、血縁がほとんどない個体同士で特別利他的な協力などをし合うわけではないものの、同じ場所に固まり生活することで捕食リスクを下げるなどといった利益を得ている状態を指す。

イカー軍団はウォーボーイズとは異なり、一人一人が高い技術力と戦闘力を有している。 そんな彼らが付き従うディメンタスはイモータン・ジョーにも匹敵するカリスマ性の持ち主である上、荒廃した世界の中でも筋骨隆々な肉体を保持している。

一方でディメンタスは完全にノリの男でもあり、発する言葉はダブルスタンダードが多く、コミュニティを運営する政治力にも乏しい。偶然存在を知っただけのシタデルを何のプランもなく襲撃し、シタデルの住民達に蜂起を呼びかけていたはずが自身が施政者になると搾取を初め(どの程度のものかは描写されないが)その上でまだシタデルの解放を叫ぶ。

自身の死後も見据えた長期的なプランを念頭に動いているイモータン・ジョーとは対照的に、ディメンタスはあまりにも刹那的、その瞬間しか頭にない人間である。彼はガスタウン襲撃の際に思い付きで仲間を殺した結果重要戦力の謀反を招き、最後には刹那的に母を殺し逃亡のスキを与えたフュリオサの手によって引導を渡されることになる。

しかし、彼の破滅を招いた刹那性はそのまま強大なカリスマ性に接続している。

まず前提として舞台であるウェイストランドは1秒後の生死すらわからない世界観であって、イモータン・ジョーのように持続可能な資源を掌握できていない限りは長期的なプランニングなど無意味である。バイカー軍団もそれを理解しているからこそ、ディメンタスのダブルスタンダードをまったく気にせず彼の刹那的な行動に従う。

彼が度々口にする「この世界に希望はない」という言葉は彼とバイカー軍団の刹那的な行動の原動力をそのまま表している。拠点を持てない彼らにベッドの上で安らかに死ぬ最期は待っていない。たとえシタデルのような資源を掌握できたとしても彼らにそれを基盤としたコミュニティを維持する政治力はなく、事実ガスタウンさえわずかな期間の間に崩壊を招いた。

だからこそ彼らは本来同じ立場であるはずなのに何らかの希望を持っていたフュリオサとジャックを許さず凄惨なリンチを加えた。彼らの目的が本当に「シタデルを奪い、自分達がその主になること」であれば、二人にシタデル襲撃の情報提供や協力を持ちかけることこそ筋であるし、追手を差し向けられるリスクを抱えている二人からすればむしろそれは願ってもない話だろう(フュリオサがディメンタスとの連帯を飲めるかは別として)。話も聞かずリンチし、フュリオサに至ってはその過程で逃してしまうというのはあまりに非合理的であり、バイカー軍団の目的が死ぬまでのヒマつぶし以上のなにものでもないことを顕著に表している。